自分のトヨタを見つける
成熟した coding agent 製品はすでに数多くあり、どれも機能が充実している。それでも私は今もよく pi を使っている。
50メートルならフェラーリはいらない
理由の一つは、私が普段抱えている仕事の多くには、そこまで高度なツールは必要ないからだ。
たとえば、A地点からB地点までわずか50メートルしかないとする。そんなときにフェラーリに乗っても、どれほど道がよく、車が優れていても、発進した途端に着いてしまう。いくら性能が高くても、この道のりでは生かせない。
フェラーリには、フェラーリにふさわしい道がある。長いタスクや複数のリポジトリにまたがる作業、並行して進める必要のある仕事には、最も強力なツールを使う価値がある。しかし、それほど重くないタスクなら、軽量な選択肢で十分だ。多くの場合、トヨタ一台で事足りる。これだけ多くのツールがある中で、私がすべきなのは、自分に合った一台のトヨタを見つけることだ。今の私にとって、それが pi である。
軽いが、粗末ではない
私が pi を選ぶのは、まずそのコミュニティとエコシステムが気に入っているからだ。
pi 自体はかなり抑制の利いた設計になっている。sub-agents、plan mode、ToDoリストなど、多くの製品が内蔵している機能をコアには入れず、拡張機能やコミュニティのパッケージに委ねている。コアを小さく保つからこそ、コミュニティが何かを育てる余地が生まれる。pi.dev/packages には便利なパッケージが数多くあり、2026年9月28日時点で5393個に達している。拡張機能、skill、プロンプトのテンプレート、テーマまで揃っている。必要な機能はたいてい誰かがすでに作っているし、適当なものがなければ pi 自身に作らせることもできる。
だから、軽くても粗末ではない。
手触りを保つ
次の理由は手触りだ。私は coding agent というものに対する感覚を失いたくない。
これは日本語に少し似ている。日本語の語感を保つために、私は日本のニュースをよく読む必要がある。しばらく触れずにいると、感覚が鈍ってしまう。coding agent も同じだ。何もかも段取りしてくれる製品にすべてを任せれば、結果は得られても、それに対する感覚は少しずつ鈍くなっていく。
pi が標準で用意しているものは少なく、多くのことを自分で決めなければならない。そうした判断を重ねることが、私にとって手触りを保つ方法になっている。
まず何が欲しいのかを明確にする
もう一つ、とても重要な理由がある。pi を使うとき、私はローカルで coding agent を動かすことに集中できる。
pi には、私の意図を先回りして補完するものがあまりない。実際にリクエストを入力する前に、いったん頭の中で、自分がどんな結果を求めているのかを考えなければならない。
そこを明確にできれば、目の前のタスクがどれほど重いのか、フェラーリを持ち出す価値があるのかについても、たいてい答えが出る。タスクの重さを見極めること自体も一つの感覚であり、日頃から磨いておく必要がある。