Hasaki

エッセイ

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AIの議事録を知識ベースに入れてはいけない

AIが自動で作成した会議の議事録は、確認を経ないまま知識ベースに入れるべきではないと私は考えている。その文書を使って、あとからAIが質問に答えたり、企画を書いたり、タスクを実行したりするのなら、なおさらだ。 問題は、会議で話し合っただけのこ…

高校数学で最も価値のある授業:必要条件と十分条件

高校数学で最も価値のある授業は、どこかの複雑な公式ではなく、必要条件と十分条件だ。数学の授業を離れたあとも、私たちは毎日この二つの概念に出会っている。ただ、「ここで言っているのは必要条件なのか、それとも十分条件なのか」と念を押してくれる人が…

“Yes, and...” で AI と英語を練習する

最近、英語を学ぶいい方法を見つけた。AI とあるゲームをすることだ。 ルールは簡単だ。まず AI が質問か一文を投げてくる。私はそれを “Yes, and...” で受けて、少し新しい内容を足す。AI がその言葉を受けてさらに話を進め、こう…

“I'm going to do” と “I'm going to be doing” は何が違うのか

今日、こんな一文を見かけた。 just the way I'm going to be teaching my kids だいたい「つまり、この先自分の子どもに教えていくやり方だ」という意味だ。 少し気になった。なぜ素直に “I'm goi…

自分のトヨタを見つける

成熟した coding agent 製品はすでに数多くあり、どれも機能が充実している。それでも私は今もよく pi を使っている。 50メートルならフェラーリはいらない 理由の一つは、私が普段抱えている仕事の多くには、そこまで高度なツールは必…

効率を100倍にする必要はあるのか?

最近、こんなことを考えている。高速で開発を繰り返しているコードプロジェクトがない自分も、ほかのエンジニアと同じように、10倍、100倍、さらには1000倍の効率を追い求める必要があるのだろうか。 誰かがAIを使ってコードを書く方法を紹介して…

「苦手」:ちょっと、手に余る

日本語を学んでいると、「苦手」(にがて)は「不擅长(得意ではない)」という意味で覚えやすい。数学が得意でなければ、「数学が苦手」と言える。この覚え方はわかりやすい。 あとになって、日本人は猫や、ある食べ物、さらにはある人についても「苦手」と…

同じ「外注」なのに、なぜ日本ではごく普通に聞こえるのか?

自分が「外注」という言葉に、二つの異なる反応をしていることに気づいた。 中国で、ある会社やポジションが外注だと聞くと、私はまず少し疑ってしまう。待遇がよくないのではないか。仕事をしても何も蓄積されないのではないか。問題が起きても、本当に責任…

平均水深1メートルでも、溺れることはある

川の平均水深が1メートルなら、安全に歩いて渡れるだろうか。 泳げない人にとって、渡る途中に深さ3メートルの穴が一つでもあれば、平均水深がどれほど浅くても助けにはならない。 平均水深は、空間上のさまざまな地点の深さをまとめて計算したものだ。し…

英語学習ツールを作りかけで、既製のものを使うことにした

最初は、ただ英語を勉強したかっただけだった。 YouTubeの動画を見ていて、聞き取れない文があると、少し戻って何度か聞き直したくなる。字幕を見ながら、マウスで何度も再生位置を動かさなくても、キーボードで前後の文へ移れたら、ずっと便利なはず…

方向は安定させ、経路は変化させる

その日の朝、私は寝坊した。 目標ははっきりしていた。9時半に、東京ビッグサイト8号館の入口に立つことだ。けれど、何もかも整っていなかった。持ち物もまだまとめておらず、経路も事前に調べていない。家を出るときには気持ちが焦っていた。 玄関先で乗…

「失礼」の一言から、少しずつわかってきたこと

とても静かなカフェで、店員が作業中にうっかりカップを割り、「失礼しました」と言った。 「失礼しました」を中国語に字面どおり移せば「刚才失礼了(今、失礼しました)」となり、この場面なら「抱歉,打扰了(すみません、お騒がせしました)」と訳せる。…

なぜ私は音声入力を使うのか

なぜ音声入力を使うのかという話をしている今も、私は音声入力を使っている。話しているあいだも、頭の中では別の考えが次々と駆けめぐり、そのうちのいくつかがまた言葉になって出てくる。キーボードで入力していると、私にはなかなかこの状態に入れない。 …

日本でビジネスをするなら、安心して紹介できる人になる

商品もチームも仕事の質も変わっていない。ただ、知人からの紹介に頼らず仕事を取ろうとした途端、ビジネスが急に難しくなった。 日本企業ブリッジの経営者、橋本敬は、そんな経験を note に書いている。独立した当初、仕事の多くは元同僚や知人からの…

「渋い」——甘くないほめ方

日本語には「渋い」(しぶい)という、なかなか面白い言葉がある。 もともとは渋味、たとえば熟れていない柿の味を形容する言葉だ。それが人に使われると、ほめ言葉になりうる。声が低くて質があって、身につけているものは決して目立たないのに、いつまでも…

ゆったり構えるとは、自分に少し余地を残すこと

中国語版の『纳瓦尔宝典』を読んでいて、こんな一文に出会った。日本語に訳すと、「ゆったりした頭脳からこそ、偉大なアイデアが生まれる」。 中国語の「悠闲」という言葉を見て、私は日本語の「余裕」を思い浮かべた。まだ少し余地が残っている、という意味…

理解は生成できても、判断力は生成できない

たとえば、ウェブサイトに検索ボックスを追加したいとする。 プロジェクトを直接操作できるAIエージェントに要件を伝える。エージェントはファイルを変更し、チェックを実行したうえで、機能が完成したと報告する。実装内容とチェック結果も添えられている…

用がなくても、少し話していい

オフィスで交わす、特に中身のない雑談は、実はとても大切だ。リモートワークで失われたのは、まさにこういう部分なのだと思う。 オンラインで同僚に声をかけるなら、何か用事がなければならないような気がする。質問はできるだけ整理して、背景もきちんと書…

邪魔しないことは、そのまま思いやりではない

日本航空に、約三分半の「Art of J」という広告があります。全編は三章に分かれ、第二章の題は Privacy、中国語では「私密空間」と書かれています。日本語なら「プライベートな空間」です。 ビジネスクラスで、一人の男性がうつむき、トレー…

AIプラットフォームの抽象化の境界――複雑さを最終的に引き受けるのは誰か

最近、Factoryを使っている。 Claude Codeが高い能力を持つCoding Agentだとすれば、Factoryが目指しているものはもっと大きい。ソフトウェア開発を、Agentが動かす一つの生産システムとして組織することだ。エン…

責任を引き受けるプログラミング:提出した人が責任を負う

AIはコードを書くコストを下げた。しかし、そのコードに責任を持つコストまでは下げていない。 「責任を引き受けるプログラミング」とは、提出した人が結果に責任を持つことだ。 AIが生成したコードであっても、提出者は結果に責任を負い、自分が引き受…

見落とした「て」

今日、仕事のチャットで一文を読み違えた。 「こちらでやりとりしてます。」 最初は、「このあと、こちらでやりとりします」という意味だと思った。それで、関連する内容を相手にもう一度転送した。 ところが相手からは、もう対応済みだと言われた。 改め…

機械が9割やったのに、なぜ人は離れられないのか

仕事の9割を自動化した、と謳う製品がある。 機械がコンテンツを生成し、人が確認して公開する。機械がフローを最後まで動かし、人が戻ってきて、これで完了と言えるかを判断する。たしかに機械は仕事の大半をこなし、人の作業も大きく減っている。 それで…

安定して3位に入る

AI製品を評価するとき、私たちは最高点に目を向けすぎていないだろうか。 コードを読み書きし、ツールを使うCoding Agentが、複雑なリファクタリングを自力で終える。モデルが、それまでどうしても解けなかった問題を解く。Agentが数時間…

従わない人が、みな理解していないとは限らない

中国語の「请勿吸烟」という表示は、多くの公共の場所で目にする。「请」は丁寧に頼むときの「どうか」、「勿」は「〜するな」という意味で、全体として「喫煙しないでください」と明確に求める言葉だ。それでも、すぐそばに表示があるのに、構わずたばこを吸…

AIは決断を先送りするコストも下げた

二つの案を比較するようAIに頼む。それぞれの長所と短所が示されても、まだ足りない気がして、別の角度から考えるよう求める。長期的なリスクが加わると、今度は最悪の場合やチームの能力、将来起こりうる変化も検討してもらう。何度かやり取りするうちに分…

母語ではない言語でプロンプトを書く

中国語で Agent にプロンプトを書くとき、私はいつも無意識のうちに言い方を婉曲にしてしまうことに気づいた。 「まず、これらのファイルに目を通してもらえますか。」 「よければ、あわせてテストも実行してもらえると助かります。」 「ここは別の…

Repo as an Agent

十分にうまく設計されたrepoは、それ自体が継続的に自己改善するAgentになりうる。 ここでいうrepoは、単なるコードの置き場所ではない。Agentも、一度だけ呼び出されるモデルのことではない。Repoには目標、知識、ツール、フィードバ…

間違いなく正しく、迷わず始められることをする

プロサッカー選手になるまでの道筋を、あらかじめすべて描ける人はいない。どのクラブに入り、どの監督と出会い、どの試合でチャンスが訪れるかは計画できない。それでも、今日ドリブルをもう一度練習することは、まず間違いではない。足の内側でボールに触れ…

暗黙の了解は最初から求められない

「この件、考えておいて。」 言葉の意味は難しくない。難しいのは、そのあと何をすればよいのかということだ。 頭の中で考えておけばよいのか、それとも意見を整理するのか。資料も調べるべきなのか。次の会議では、聞かれるまで待つのか、自分から案を出す…

英語学習は単語アプリから始めなくてもいい

英語を学ぼうと思ったとき、多くの人が最初にするのは、単語アプリをダウンロードすることだ。 単語帳を一つ選び、一日に覚える単語数を決めて、記録をつけ始める。この道筋が自然なのは、目標も進捗もフィードバックも、すでにアプリが用意してくれているか…

自社製品がなくても、FDE はできるのか?

最近、ずっと考えていることがある。自社製品を持たない会社にも、本当の意味での FDE は成り立つのだろうか。 私の答えは「成り立つ。ただし、プロダクト企業よりも条件は厳しいかもしれない」だ。 「顧客の課題から出発する」と言うだけでは足りない…

土曜日は一週間のしっぽではない

以前の私は、一週間は月曜日から始まるものだとずっと思っていた。 月曜日の調子がよければ、その週はたぶん少しうまくいく。月曜日に波に乗れないと、その後の数日はずっと追いかけることになる。けれど、あるとき「土曜日力」という言葉を目にした。土曜日…

爆発半径を制御する

AI Codingについて議論するとき、多くのチームが今も最初に考えるのは同じ問いだ。Agentがコードを書いたあと、誰がReviewするのか。Mergeさせてよいのか。問題が起きたら誰が責任を負うのか。 どれも間違った問いではない。ただし…

プロンプトには、あえて余白を残す

私はときどき、一本の記事や一連の会話、あるいはまだ整理もしていない資料の山を Agent に渡して、一言だけ尋ねる。 結局のところ、これは何なのか? Prompt Engineering の基準から見れば、この問いはほとんどすべてが失格だ。…

脳味噌:正しく訳したあと、言葉には何が残るのか

最近、ポッドキャストを聴いていて、ある日本語の言葉に出会った。「脳味噌(のうみそ)」だ。 「脳」は脳で、「味噌」は味噌。二つを合わせると脳髄を指し、人の頭脳や知力を表すこともある。 脳の中の味噌。 その光景は少しグロテスクなのに、なぜかかわ…

なぜ定義が重要なのか

何かを学ぶとき、最もよい方法の一つは、その最も基本的な定義に立ち返ることだ。 ある概念が常識のように見えても、そこで問いを止めてはいけない。それはいったい何なのか。一言で明確に説明できるだろうか。 この問いは簡単そうに見えて、実は難しい。私…

混乱を思考と取り違えない

朝、パソコンの前に座ったとき、頭はまだすっきりしている。受信箱には何通かメールがあり、Slack には赤い通知がつき、昨日から残っている小さな用事が二つある。どれも次にやることは明確だ。一言返信する、確認する、数字を一つ直す。終わればリスト…

Agentにはワークフローではなくプリミティブを渡す

Agent用のHarnessは、少数の明確なプリミティブから始め、具体的なツールやワークフローをタスクに応じて生み出せるようにする。 Agentが抽象化のコストを変える AIがなかった頃、SDKはたいてい合理的なトレードオフだった。認証、ペ…

Long-running Agentは動き続けているわけではない

私たちは通常、「長時間稼働する」と聞くと、一つのプロセスが長く生き続ける姿を思い浮かべる。データベース、メッセージキュー、Webサービスは、プロセスが終了するまでメモリを使い、リクエストを待ち受ける。その直感に従えば、Long-runnin…

エンドツーエンドのデリバリーとは何か

顧客が、きれいに整理されたTaskを渡してくれることはほとんどない。 「Leadの質と商談から成約までのProcessを分析し、成約率が低い原因を突き止め、改善策を提案してください」とは言わない。 もっとありそうなのは、こんな一言だ。 「最…

10倍高くても、私がHaikuを選んだ理由

最近、文脈に応じた語釈を返す機能のために、モデルを選定する機会があった。ユーザーが英単語を選択すると、その単語が含まれる文と段落を踏まえ、1〜8個の漢字からなる中国語の語釈だけを返す機能だ。 一見すると軽いタスクだが、実際にテストしてみると…

私はAgentの盲導犬だ

Agentは私の盲導犬ではない。 むしろ逆だ。Agentは驚異的な能力を持ち、猛烈な速さで行動できる一方、現実を見ることができない人に近い。そして私は、そのAgentの盲導犬である。 Agentは数分でCodebase全体を読み、数百、数千…

情報と知識の違い

同じラベルが異なる問いを隠す XでAI memoryを検索すると、一見すると同じテーマを扱っているような議論がいくつも見つかる。コンテキストウィンドウ内での情報保持に注目し、memoryを現在のタスクにおける作業記憶と捉える人がいる。セッシ…

グラフの成長段階で、木構造へ急いで固定してはいけない

プログラミング言語の文字列は、当初ほとんど設計するまでもないものに見える。文字の並びにすぎないのではないか。文字をメモリへ連続して格納し、長さ、連結、添字によるアクセスを提供すれば、それで話は終わるように思える。 C言語の文字列は通常、ゼロ…

AIはもう十分。難しいのは、適切なHarnessを選ぶこと

少し前、HubSpotのデータ照会に関する要件を整理していた。目標は一文で表せる。社員が自然言語で、自分の権限の範囲内にあるデータを検索できるようにすることだ。 モデルとAPIをつなげば済むように思える。モデルは質問を理解でき、HubSpo…

AIネイティブは仕事の再設計から始まる

AIネイティブであることは、AIの専門用語に詳しいことでも、より多くのTokenを使うことでも、あらゆるWorkflowにAgentを加えることでもない。 AIによって変わったコストと制約を見極め、それに合わせて仕事を組み直すことだ。目指す…

AIプログラミングは、まだ自らのSpring Bootを待っている

AIプログラミングは、「モデルはコードを書けるか」という段階をすでに越えた。しかし、「チームはどうすれば安定してデリバリーできるか」という段階は、まだ越えていない。 Prompt、Context、Memory、Tool、MCP、Sandbo…

インターフェースがAIの使い方を形作っている

AIを開き、難しい仕事を任せようとする。入力欄に「ホームページを作り直して」と書いて送信する。すると、すぐに質問が返ってくる。どんな雰囲気にしたいのか。どのページを変更するのか。モバイル対応はどうするのか。参考サイトはあるか。先にコードを読…

Agent時代、branchはもはやデフォルトではない

Branchが開発のデフォルトになったのには、それを支える条件があった。commit履歴に名前を付けるだけでなく、コードの隔離、並行開発、レビュー待ちまで担ってきたからだ。ツールとチームのルールがその役割を前提に育つうちに、「まずbranc…

学びの摩擦を調節する

学習効率というと、何もかも速くすることばかり考える人が多い。資料は自動で整理され、答えはすぐに出てきて、問題が起きてもワンクリックで解決できるのが理想だとされる。AI が登場してから、この傾向はさらに強まった。 しかし、学びはいつもスムーズ…

Workflow と Autonomous Agent が長く共存する理由

Autonomous Agentが自ら計画し、ツールを呼び、例外まで処理できるなら、Workflowはいずれ置き換えられる。そう考えるのは自然だ。次の手順をAgentがその場で決められるのに、なぜ先にフローを描くのか。 この推論は、対話の入…

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